巨大岩塊固定工の概要、構造とは?
巨大岩塊固定工法の概要
対象となる、不安定岩塊に設置したロックアンカーと、上部の安定した斜面に設置したUBロープアンカーとをハンガー索・連結索で接続し、UBロープアンカーの引抜耐力で、対象岩塊の滑動や転倒を抑止する工法です。
主な対策工と対応可能重量(目安) | |
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除去工 | ~7,000kN(約700t) |
グラウンドアンカー工 | 1,000kN(約100t)~ |
接着工 | - |
ロープ掛工 | ~500kN(約50t) |
巨大岩塊固定工法 | 300kN(約30t)~ |
巨大岩塊固定工法の構造
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①UBロープアンカー
UBロープアンカーは、地盤条件に応じて2種類のアンカーより選択可能です。
対象となる、不安定岩塊の上部、安定した斜面にUBロープアンカーを設置します。
柔軟性・屈曲性に優れたワイヤロープ体の構造と、抵抗板・抵抗ピンにより、頭部変位を抑止して高い引抜耐力を発揮することができます。型式 表土の有無 地盤条件 削孔長 適用 SDタイプ
(自穿孔式)有
(0.5m以上)表土+岩盤 0.9m(※)〜 表土50cm以上かつ孔壁が自立しない場合に適する。 PBタイプ
(他穿孔式)無 岩盤 1.4m 孔壁が自立する場合に適する。 UBロープアンカーSDタイプ
UBロープアンカーPBタイプ
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②ロックアンカー
ロックアンカーは、岩質により長さを変えることができます。
対象となる不安定岩塊へ、ロックアンカーを設置します。 UBロープアンカー同様、柔軟性・屈曲性に優れたワイヤロープ体の構造です。
≪選定の目安≫
・硬岩・軟岩 アンカー長1.6m(削孔長1.1m)
・風化岩 アンカー長2.1m(削孔長1.6m) -
③ハンガー索・連結索・連結金具・荷重分散金具
UBロープアンカーとロックアンカーは、ハンガー索・連結索・連結金具・荷重分散金具を介して接続します。
対象岩塊や地形によって、UBロープアンカーとロックアンカーの設置距離が延びる場合は、ハンガー索の長さを延伸(標準10m~+5m毎)することで調整可能です。
ハンガー索・連結索
連結金具(UBロープアンカー)
連結金具(ロックアンカー)
荷重分散金具
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巨大岩塊固定工法が採用される顕著な事例
比較される対策工の概要と課題(落石予防工を主体とした場合)
対策工 | ①除去工 | ②グランドアンカー工 | ③ワイヤロープ掛工 | ④接着工 |
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概要 |
○不安定な浮石・転石を直接的に除去する方法。 |
○大規模な不安定岩盤が起動しない様に基盤に定着させる方法。 |
○格子状にしたワイヤロープや数本のワイヤロープを用いて、浮石・転石を覆い(巻付け等)、滑動や転倒を抑止する方法。 |
○亀裂性崩壊の高い岩塊の亀裂面を基岩盤と特殊接着系モルタルを用いて一体化を図り、安全性を向上させる方法。 |
※上記は、巨大岩塊固定工法を比較検討する場合の主な事例です。
対策工① 課題
斜面が急峻で上方に有る場合、施工時の安全施工が困難である。浮石は除去後の背面が不安定化する恐れもある為、別途処理が必要となる場合がある。
解決策
巨大岩塊固定工は対象岩塊を直接吊上げる為、斜面が急峻でも対処が可能、振動も少なく安全施工も可能である。
対策工② 課題
ボーリングマシンを使用する為、資機材運搬の仮設備が大掛かりとなり、施工性や用地取得に課題がある。山間部(奥地)での施工は困難となる場合が多い。
解決策
巨大岩塊固定工は資機材が軽量で人力作業が主体の為。仮設備は軽微である。施工性が良く、山間部(奥地)など制約条件の多い現場は特に優位性が高い。
対策工③ 課題
現地条件によりワイヤロープの設置が困難となり、抑止力が期待できない場合がある。恒久対策前の暫定構造物として取り扱う事が望ましい。
解決策
巨大岩塊固定工は対象岩塊を直接吊上げる為、現地条件の制約が比較的少ない。恒久対策の永久構造物として取り扱われる。
対策工④ 課題
基岩盤の無い転石は適用が困難である。
解決策
対策工③で対策出来ない転石は、巨大岩塊固定工を適用する。
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巨大岩塊固定工の耐久性は?
部材規格と耐用年数
- 使用される部材の防蝕仕様は全て溶融亜鉛めっきを標準としています。
※UBロープアンカー・ロックアンカー・ハンガー索はアルミ亜鉛合金めっきを標準としています - 耐用年数の判定は郊外地区(田園地帯)において概ね約50~70年程度が目安となります。
計算式:耐用年数=亜鉛付着量(g/m2)÷腐食速度(g/m2/年)×0.9
- 海岸地帯等の腐食速度の大きい地域においてはアルミ亜鉛合金めっきを選択することで、上記と同程度の耐用年数を確保することが可能です。
- 景観保全を考慮しなければならない箇所において着色仕様を選択することも可能です。
溶融亜鉛めっき使用環境別耐用年数
巨大岩塊固定工法 施工手順
主な仮設備
施工機材・使用部材ともに軽量の為、現場内運搬にはモノレールや簡易ケーブルクレーン等が主体となります。
標準的な施工手順フローチャート
起工測量
UBロープアンカー及びロックアンカーの削孔位置を確認します。
削孔位置が変わる場合は、ハンガー索長を変更する必要が有るか検討します。
UBロープアンカー・ロックアンカー設置
≪UBロープアンカーSDタイプ≫
①表土0.3mを床掘りし、UBロッドを床掘り底面から+10cmを目安に、削岩機で所定の長さまで人力削孔します。
②グラウト注入後、UBロープアンカーをUBロッド頭部にねじ込みます。
③床掘り部は、モルタル等で間詰・埋戻し整形を行います。
≪UBロープアンカーPBタイプ・ロックアンカー≫
①削岩機で所定の長さまで人力削孔します。
②グラウト注入後、アンカー体を挿入します。
【UBロープアンカーSDタイプ】
【UBロープアンカーPBタイプ・ロックアンカー】
アンカー確認試験・抵抗版・抵抗ピン設置
グラウト注入~養生期間後、アンカー確認試験を全箇所にて実施します。
確認試験実施後、抵抗版・抵抗ピンを設置します。
UBロープアンカー・SDタイプ
UBロープアンカー・PBタイプ
ロックアンカー
ハンガー索・連結索設置
UBロープアンカー、ロックアンカーに連結金具を取付けます。
ハンガー索をロックアンカー×1本、連結索は1本を折返しUBロープアンカー×2本に取付けます。
ハンガー索と連結索は、荷重分散金具で接続し、緊張力(10kN)を導入します。
ハンガー索、連結索の折返し端部は、ワイヤクリップで締付け固定します。
施工性および維持管理性
◎使用する資機材は、モノレールまたは簡易ケーブルクレーンによる運搬が可能であり、ロープ足場による人力作業がメインです。
◎適用できる範囲
・基本的に、どんな大きな岩塊であっても対応可能です。
・岩塊・上部斜面にアンカーを適切に設置出来れば、対応重量の上限はありません。
◎適用できない範囲
・対象岩塊へロックアンカーの設置が困難な場合は適用困難です。
・岩塊の厚さ(奥行)が薄く、ロックアンカーが対象岩塊を突抜けてしまう場合は適用できません。
・風化著しい岩質で、ロックアンカーの定着が見込めない場合も適用は困難です。
但し、他工法による併用対策によって適用可能となった事例もあります。
◎基本的には必要有りませんが、自社にて以下の項目について確認しています。
チェック項目 = 「対象岩塊の状況」・「周囲の地形状況」・「ハンガー索の緩み」・「部材の破損等」