開発ストーリー

日本で初めて、落石防護ネットに緩衝装置を組み込む技術を使ったRCネット工法と、ローコスト・ハイスペックを実現したネットワン工法を開発し業界に驚きを与えたシビル。2017年4月に新商品「強靭防護網」を発表しました。その背景には、国が新たに設けた技術基準への対応の必要性がありました。

1. 国が定めた性能検証の実験方法に対応せよ!

後に「高エネルギー吸収型」と呼ばれるようになった緩衝装置付き落石防護ネットを日本で初めて開発し、世に広めたシビル。ただし新しい技術のため、業界共通の性能検査基準はなく、各社が独自評価を行うのみでした。これに対し、国は2015年から落石防護工法の性能評価方法を新たに定める委員会を発足。シビルもメンバーとして参加し、基準策定のための議論を重ねていました。その中で、性能検証のための実験方法に落石防護への「衝突速度は25m/s(時速換算で90km)」「阻止面に対し垂直に入射」という条件が定められる算段が高まり、事業者に衝撃が走りました。というのも、そのような条件の検証実験はほとんどされていなかったからでした。

国が定めた性能検証の実験方法に対応せよ!

2. 最初の困難は実験場の「確保」と「設計」

最初の困難は実験場の「確保」と「設計」

シビルの性能検証実験は実際の落石現場を想定し、衝撃速度は60km/時、入射角度も鋭角で行っていました。しかし、既存の施設では国が定める基準で実験を行うことはできず、新たに広大な実験場を確保する必要がありました。まず苦労したのは場所の確保。実験場に適する採石場を5年ほど探し回り、2015年に糸魚川市親不知にある採石採取を廃止した場所を見つけました。ようやく場所を確保したものの、実験場の建設にも苦労しました。「これまでに、誰も手がけなかった実験場を作り上げなければいけませんでした。特に衝突速度がしっかり出るか、安全に実験が行えるかは、最後まで心配でした」と、窪田社長。それでも、社内外で多くの人の協力を経て2016年7月に無事実験場が可動。ようやく国の基準に則った性能評価実験を行うことができるようになりました。

3. 開発のポイントは性能とコストのバランス

実験施設が整ってから開発に着手したのは金網をメインとしたコストバランスの良いネットタイプの強靭防護網。しかし、要となる緩衝装置が上手く作動せず失敗が続きました。落石対策便覧改定後、いち早く対応製品を発表したいシビルは、失敗が続いたネットタイプの開発を一時凍結。RCネット工法で使う緩衝装置を流用し、高強度ロープを多数用いる「力技」により新基準をクリアした「強靭防護網・ロープタイプ」を2017年4月に完成させました。しかし、ロープタイプは高コストのため、より市場競争力の高いネットタイプの開発を再スタート。室内の試験場で500回以上、実験場でも60回以上の試験を重ね2017年10月に製品完成にたどり着きました。実験を担当した中村さんは、「少し構造を変えると結果が大きく変わります。予測をして次の構造に生かす。仮説を繰り返し実証していくことはとても面白味がありました」と苦労の中でも挑戦を楽しんでいたと語ります。

開発のポイントは性能とコストのバランス

4. 究極の目的は人命を守ること

最初の困難は実験場の「確保」と「設計」

落石防護は、現場によって必要な強度とかけられるコストが変わってきます。それに対応すべく対応可能エネルギー1,200kJと500kJの強靭防護網・ネットタイプを開発済。続いて対応可能エネルギー200・700・2500kJのネットタイプ、そして5000kJの新製品の開発が進行中です。(※全て2018年9月末現在)シビルではこうした製品の開発にあたり性能検証の公開実験をはじめ、実験設備や実験方法の情報開示を積極的に行っています。というのも、災害の多い日本で落石防護は、少しでも高い確率で人命を守る対策。人の命を守るからこそ、ルールに則り、透明性を持って事業に取り組みたいという願いからです。衝撃対策に特化したオンリーワン企業・シビルは、これからも新しい技術の開発に挑戦を続けていきます。

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