シビルの第1号自社製品「RCネット工法」は、ワイヤーロープ、金網、アンカー及び緩衝金具から構成される落石防護ネットです。緩衝金具が、ブレーキの役割を果たし落石の衝撃エネルギーを摩擦エネルギーに変換して吸収する技術により、これまでの落石防護ネットの10倍以上の性能を実現しました。
これまで世界になかった、まさに「オンリーワン」の技術を生み出した、シビルの原点とも言える開発ストーリーを紹介します。
シビル株式会社は1994年に創業。もともと主に橋梁(きょうりょう)の施工をする下請業者でした。落石対策のエキスパートとしての一歩を踏み出したきっかけは、1996年の北海道豊浜トンネル岩盤崩落事故。通行中の路線バスと乗用車が巻き込まれた不幸な事故は、国の道路安全に関する考えへ衝撃を与えました。そして、全国的に斜面危険箇所の緊急一斉点検と対策がスタート。防災への取り組みが活発になる中、シビルでも事故を受け「何かできることはないか?」と、斜面防災(落石対策)工事への参入を始めました。
当時を語る窪田社長
RCネット工法施工例
橋梁施工時代から「緩衝装置」の技術に携わっていたシビル。当時、ロープと金網で止めるだけだった落石防護ネットに「緩衝装置」を組み込むことで、落石防護ネットの強度を飛躍的に高められるのではないかと発案。1998年に金沢大学・吉田博教授の協力の下、開発をスタートさせました。
とは言え、施工業者だったシビルには、製品開発のノウハウも、実験設備もありません。もちろん落石防護ネットや緩衝装置を作る工場もない。さらには、発案したアイデアは世界で初めての技術で、前例もない。技術面は吉田教授の協力の下、窪田社長(当時課長)が担当。実験場や重機を借り、ワイヤーや金具は業者へ発注。そんな「ないないづくし」の中、ゼロから手探り状態での挑戦でした。
初めてのチャレンジを経て、約1年後の1998年12月に自社製品の第1号「RCネット工法」を発表。その性能は桁違いで、従来の落石防護ネットの耐用エネルギー150KJ程度に対して、RCネット工法はなんと8,000KJ!これは、単純に落石の重さに置き換えると、もともと3トンの落石までしか対応できなかったものが、20トンの落石にも耐えられる性能になったということ。まさに、業界の常識を覆すような技術を生み出したのです。
実は、斜面防災の約80%は3トンの落石まで耐えられる従来工法で対応が可能だそう。しかし、逆に言えば残りの約20%への対策方法は限られていました。RCネット工法の開発はそのニッチを狙ったのです。
実物実証実験
業界に衝撃を与えたRCネット工法は、後に「高エネルギー吸収型」と呼ばれる落石防護ネットとして他社も開発を進めることになります。当時、日本唯一の技術でしたが、発表からすぐの1999年2月に新潟県村上市にて第1号RCネット工法採用の防災工事を受注。2000年2月には国土交通省に新技術として登録。既存技術では対応できなかったニッチ分野のトップランナーとして、シビルは新しい一歩を踏み出しました。とは言え、当時はまだ施工の仕事が会社としては中心で、落石対策業界での認知度も限られた存在。この後、シビルは営業体制の構築や、新商品開発、さまざまな苦労を乗り越え業界で三本指に入る落石対策のエキスパートとして成長していきます。
その2つ目の転機となったのが、RCネット工法に次ぐ自社「ネットワン」の開発でした。
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